2000 / 10: No. 10
リボソーム(Ribosome)
:翻訳 工藤高裕 (PDBj)
わかりにくい構造
リボソームは何十年もの間科学者たちによって調べられてきた。電子顕微鏡は年々より詳細な見解を与え、個々のリボソーム全体の形と種間のリボソームの形の違いを明らかにしてきた。より最近になって、詳細な電子顕微鏡写真の3次元再構成法による研究で、リボソームとメッセンジャーRNA(伝令RNA)、転移RNA、蛋白質伸長因子の間の相互作用が明らかになってきた。この電子顕微鏡で得られた形態学的な研究で得られた知見は、原子構造を理解する上での土台となっている。
リボソームは2つのサブユニットで構成されている。上図右に示したのが大きい方のサブユニットで、左に示したのが小さい方のサブユニットである。もちろん、ここで言う「小さい」とは「相対的に小さい」という意味である。一般的な蛋白質に比べればどちらのサブユニットも大きなものとなっている。どちらのサブユニットも、橙と黄色で示した長いRNA鎖と青で示した蛋白質とで構成されている。新しい蛋白質を合成する時、2つのサブユニットはお互いを固定し合い、両者の間にある空間にメッセンジャーRNAを閉じこめる。そしてリボソームは1度に3ヌクレオチドずつメッセンジャーRNAの上を歩き、アミノ酸を1個ずつ付け加えて新しい蛋白質を作っていく。
大きなサブユニット
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大きい方のサブユニットの構造は PDBエントリー 1ffk で見ることができる。大きい方のサブユニットにはリボソームの活性部位が含まれる。蛋白質が合成される際ここで新しいペプチド結合が作られていく。右図ではが中央を横切る溝の中を水平にメッセンジャーRNAが通る。ここに示した構造は、阻害剤が結合した他の構造とともに、リボソームがリボザイム(触媒性RNA分子)であることの明確な証拠となる。通常の酵素は化学反応を触媒するのにアミノ酸を使うが、リボソームはその合成作業を行うのにアデニンRNAヌクレオチドを使うようである。このアデニンを右図では緑色で示した(後ほどより拡大して見ることにする)。
大きい方のサブユニットは2つのRNA鎖で構成されている。長い方は橙色で、短い方は黄色で示している。そして何十個もの蛋白質がリボソームの表面に結合している。その多くは長く曲がりくねってリボソームの中心部へと伸び、RNA鎖とくっついて適切な形を保たせている。いくつかの蛋白質はこの結晶構造では見えていないが、それは恐らく柔軟性が高すぎることによる。この見えていない蛋白質の概形をこの図では薄い青で示しているが、これが電子顕微鏡で見る際に通常目印として用いられる2つの突き出た部分を形成する。
小さなサブユニット
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小さい方のサブユニットの構造は PDBエントリー 1fka と PDBエントリー 1fjg で見ることができる。こちらのサブユニットは蛋白質を合成している間情報の流れを管理している。まずメッセンジャーRNAを見つけ出し、大きい方のサブユニットと結合した後、メッセンジャーRNAのコドンとそれに適した運搬RNAとの対合を確かなものにする。メッセンジャーRNAは小さな穴(分子の左側)を通って、上にある "head" と下にある "body" の間の溝にある「解読センター」に入っていくと考えられている。しかし、メッセンジャーRNAは針のようにこの穴を通り抜ける必要はない。なぜならこの穴はリボソームRNAの環でできていて、メッセンジャーRNAが入いれるよう掛け金のように開くことができるからである。
構造をみる
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構造を見る前に、準備をしよう。大きい方のサブユニットも小さい方のサブユニットもたくさんの原子を含む巨大な複合体である。PDBエントリー 1ffk の大きい方のサブユニットの構造には64,000個以上の原子が含まれている。この構造の著者は、蛋白質についてはα炭素のみを取り出して登録しているがそれでもこれだけの原子数になっている。小さい方のサブユニット(PDBエントリー 1fka)も蛋白質については部分的な構造ではあるが、それでも原子の数は35,000個に近い。これだけ大きな構造になると、多くの対話型分子表示プログラムは非常に緩慢な動作をするようになる。
大きい方のサブユニットの構造に基づいて、2486番のアデニンが合成反応を触媒すると考えられていたが、後の研究でこれは反応には必要ないことが示された。現在、ペプチド輸送反応は転移RNAにある糖のヒドロキシル基の組み合わせと、リボソームによる転移RNA分子の正確な位置決めによって触媒されていると考えられている。