| More ... | PDB:3BEPタンパク質名大腸菌DNAポリメラーゼβサブユニットとDNAの複合体 生物種大腸菌 生物学的役割生命の根本である遺伝情報は、二本鎖DNA(dsDNA)に塩基配列の形で刻み込まれている。DNA複製は、大量の遺伝情報を正確に複製するための過程であり、細菌や真核生物、ウィルスに至るまでのあらゆる生物が保持している。この過程は細胞分裂に先立って起こる。最初に、ゲノム上の特定領域(複製起点)において、dsDNAが2本の一本鎖DNA(ssDNA)に開裂する。この開裂部分は複製バブルとよばれ、二つの複製フォーク(Y字型の分岐点)を持つ。 次に、二つの複製フォークは新たなssDNA鎖を合成しながら、双方向へ進行していく。この段階には、様々なタンパク質が携わっている。(大腸菌の、複製フォークにおけるDNA合成は Fig.1 を参照)。 最終的に、1本の親dsDNAは2本の娘dsDNAに複製され、娘細胞へ分配される。(大腸菌における、DNAの娘細胞への分配メカニズムは PDB:2IUU を参照)。
大腸菌DNAポリメラーゼIIIの中で、新しいDNAを実際に合成するのはコア部分(α、ε、θ)である。βサブユニットは、コア部分がDNAから離れないようにするためのクランプ(止め具)の役割を果たしており、γ複合体はβサブユニットをコア部分へ装着するためのクランプ・ローダーの役割を担っている。これらのタンパク質は、生物ごとに種類が異なっている。(Table.1 参照)。
大腸菌(PDB:2POL)、T4ファージ(PDBjMine:1CZD)、酵母(PDB:1SXJ)のクランプは既に結晶構造が得られており、いずれも多量体の環状構造であることが判明している。(Fig.2 参照)。いずれの構造も、中央にdsDNAが通過することができるほどの大きなチャンネル(直径~35Å)を持っている。しかし、DNAに直接結合した状態のクランプは実際に観測されておらず、クランプがDNA上をどのように移動しているかは不明であった。そのような疑問を解くために、今回は大腸菌のβサブユニットとDNAの複合体の結晶構造が解かれた。
立体構造の特徴
大腸菌のβサブユニットは、中央に直径約35Åの穴をもつ、閉じた環状(直径80Å)構造である。その穴は、どんな立体障害もなくA型またはB型(直径約25Å)DNAを収容するのに十分な大きさを持っている。βサブユニットは二量体を形成しており、各単量体は2つのβシートからなる外側の層と、2つのαヘリックスからなる内側の層で構成される3つの類似したドメインを持つ。この立体構造は対称的であるため、対称な円柱状の二本鎖DNAとの相互作用によく適していると言える。 今回新たに得られたβクランプとdsDNA(10/14bpのプライマー)の複合体構造は、dsDNAは約22°傾いた状態でβクランプを通過していることを明らかにした。(Fig.3 右)。C端側の表面(ポリメラーゼIIIのコア部分やクランプローダーが結合する面)では、各単量体から2つずつのアミノ酸残基(R24とQ149)が突き出ている。 今回の複合体では、dsDNAは単量体Bの2つの残基と結合している。(Fig.3 左)。一方、dsDNAが反対側へおよそ22°に傾いた場合、単量体Aの2つの残基と結合すると考えられる。
また、βクランプはホモ二量体であるため、二つの同一なタンパク質結合部位を備えており、二つの異なるタンパク質を同時に結合することが可能である。(Fig.4)。
以上の事実からは、βクランプはDNAの傾きを切り替えることにより、同一のβクランプに結合した二種類のDNAポリメラーゼを使い分けていることが推測できる。(Fig.5)。
更に、Roxanaらの行った一連の実験により、ssDNAはβクランプのタンパク質結合部位に直接結合できることが明らかとなった。この結合は、何らかのきっかけによりポリメラーゼ IIIのコア部分がクランプから離れてしまった場合、次に鋳型となるべきssDNAの位置をβクランプに固定しておくプレスホルダーのような役割を担っているかもしれない。(Fig.6)。
タンパク質構造データバンク(PDB)参考文献原論文
その他著者: 伊東 純一 |