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PDB:2RH1

タンパク質名

β2アドレナリン受容体

生物種

ヒト

生物学的役割

7回膜貫通型の膜蛋白質であるG蛋白質共役型受容体(GPCR) の1つであるβアドレナリン受容体は交感神経の神経終末より放出されるノルアドレナリンや、アドレナリンを主にリガンドとする受容体である。βアドレナリン受容体にはβ1、β2、β3受容体の3種類のサブタイプが存在し、それぞれが異なる組織分布をしており、様々な生理作用を担っている:β1受容体は主に心臓に分布し、その刺激は心収縮力を増強させ、心拍数を増加する。β2受容体は主に平滑筋に分布し、平滑筋を弛緩する。そして、β3受容体は主に脂肪細胞・膀胱に分布し、脂質代謝や排尿を促進する。これらの作用は、各βアドレナリン受容体と三量体G蛋白質Gsの共役によって発現すると考えられてきたが、近年、βアドレナリン受容体は複数のG蛋白質と共役することがわかってきた。これまでの報告から、β1受容体はGs、Gi/oと、β2受容体はGs、Gi/o、Gqと、β3受容体はGs、Gi/oと共役できることが明らかとなっている。 これまで、GPCRの構造情報は網膜の光受容体であるウシロドプシン(PDBjMine:2I35)に限られていたが、KobilkaとStevensのグループによりリガンド結合型GPCRであるβ2アドレナリン受容体の結晶構造が初めて解明された。

立体構造の特徴

2rh12rh1_x2rh1_y

fig1

(図1)全体構造

β2アドレナリン受容体は、7本の膜貫通ヘリックスが束になって形成された膜蛋白質である。細胞外・細胞内それぞれ3本のループを持ち、C末端側の8本目のへリックスは細胞膜の内側に面している。本構造では、結晶の安定性を増加させるため、部分逆アゴニスト(基底状態より活性を下げる薬)であるcarazololが結合し、さらに細胞内第3ループがT4 lysozymeに置換されている。

fig2

(図2)コレステロール依存的な二量体構造

βアドレナリン受容体をはじめとして、GPCRはホモ、もしくはヘテロ二量体で機能するということが報告されている。コレステロールを添加して結晶を作成したところ、第Iループと第VIIIループを境界面としてコレステロールを介した二量体が形成された。これは細胞膜上のコレステロールの有無に依存したβ2アドレナリン受容体の機能と関連しているのかもしれない。例えば、新生児の心臓においてβ2アドレナリン受容体は三量体G蛋白質のGsと共役した後にGiと共役するが、コレステロールを除去した場合にはGsのみと強く共役する。

fig3a fig3b

(図3) ロドプシン(左)とβ2アドレナリン受容体(右)の細胞外ループの比較

細胞外領域の構造はリガンド結合部位(膜貫通ヘリックス内部)の構造を制御する上で重要な部位である。ロドプシンとβ2アドレナリン受容体の細胞外領域を比較すると相違点が観察された。ロドプシンでは細胞外第2ループ(ECL2)がシート構造を形成し、膜貫通ヘリックス内にうもれていたのに対し、β2アドレナリン受容体では細胞外第2ループはヘリックスを形成し、細胞外へ突き出ていた。β2アドレナリン受容体では細胞外ループ間の2つのジスルフィド結合(Cys184-Cys190, Cys191-Cys106)が存在し、細胞外領域の構造の安定化に貢献している。

fig4a fig4b

(図4) ロドプシン(左)とβ2アドレナリン受容体(右)のリガンド結合部位の比較

ロドプシンとβ2アドレナリン受容体のリガンド結合部位は類似しており、膜貫通ヘリックス内部の芳香族アミノ酸に富んだ環境に形成されている。ロドプシンでは、全逆アゴニスト(基底状態の活性を無くすリガンド)である11-cis-retinalがPhe212, Tyr268に挟まれた領域に位置し、β-ionone環を介してTrp265と直接作用している。ロドプシンのTrp265は光による活性化において構造変化を引き起こす重要な残基であり、β-ionone環との相互作用により不活性化状態を安定化させている。一方、carazololはβ2アドレナリン受容体のTrp286, Phe208, Phe289, Phe290付近の領域に結合していた。β2アドレナリン受容体Trp286はロドプシンのTrp265に対応するが、carazololとTrp286は直接相互作用していない。その代わりにcarazololとPhe290の相互作用がTrp265-Phe290間の相互作用を安定化させ、ロドプシンのように不活性化状態を安定化させている。

タンパク質構造データバンク(PDB)

参考文献

原論文

  • Cherezov, V. Rosenbaum, D.M. Hanson, M.A. Rasmussen, S.G. Thian, F.S. Kobilka, T.S. Choi, H.J. Kuhn, P. Weis, W.I. Kobilka, B.K. Stevens, R.C.; "High-resolution crystal structure of an engineered human beta2-adrenergic G protein-coupled receptor."; Science; (2007) 318:1258-1265 PubMed:17962520.

その他

  • mom100 今月の分子(Molecule of the Month)

著者: 稲生 大輔


English version:PDB:2RH1