| More ... | PDB:2ONKタンパク質名ABC輸送体ModBC/ModA複合体 生物種Archaeoglobus fulgidus (好熱性古細菌) 生物学的役割ATP結合カセット(ABC)輸送体は、ATP加水分解で得られるエネルギーを利用し細胞膜を越えて様々な物質を輸送するタンパク質群で、様々な生物に見られるものである。 異物排出や免疫反応における抗原提示(TAP)など生体防御に関する役割を担うものや、がん細胞の多薬抵抗性(MDR)の原因となるものなどが知られている。 また、変異により嚢胞性線維症、リンパ球減少症、副腎白質ジストロフィーなどの遺伝病を引き起こしたりするものも知られており、このタンパク質の機能を阻害する方法が明らかにすることは、治療薬の開発などに有効だと考えられる。 ところで、このタンパク質の主な機能は、真核生物では分子の排出であるが、細菌では糖・ビタミン・金属イオンなど必須養分の取り込みである。また取り込まれる金属イオンには微量要素であるモリブデンなども含まれる。 立体構造の特徴
ここに示すのは好熱性細菌Archaeoglobus fulgidusから得られたモリブデンイオン/タングステンイオン輸送体(ModB2C2)とその結合タンパク質(ModA)との複合体の、解像度3.1Åでの結晶構造である。 ModB2C2は、転移経路を提供する2つの膜貫通ドメイン(TMD)と、ATPを加水分解して輸送反応を推進する2つの細胞質ヌクレオチド結合ドメイン(NBD)とで構成されている。 TMDに当たるのはModBサブユニット(図1)で、1サブユニット当たり6本、二量体全体で12本の膜貫通らせんを持つ。これらは内向きの構造を作り、細胞膜の外側境界近くの入り口は閉じている(図2、3)。ゲートの開閉に関わる部分(ゲート領域)は、モリブデン搬入体などの間で保存性が高い領域である。
NBDに当たるのはModCサブユニットで、ATPを加水分解する。上部中央の窪みにATPが結合すると閉じた構造に変形する。 横からの図(図4)では分からないが、ATPが結合する窪みは前後に2カ所あり、そのことから1回の輸送当たり2分子のATPが消費されると考えられる。このATP結合部位はPループ、LSGGQモチーフとそれぞれ呼ばれ、ATP加水分解タンパク質の間でよく保存されている領域である。 このLSGGQモチーフ付近は、ModBの細胞質側に突き出た短いらせん(4a)と接触している。 ここを通じてModCの構造変化がModBに伝えられ、 ModBは細胞の内側に開いた構造から、外側に開いた構造に変化して、タングステンがTMDに取り込まれる。 ModCからATPが解離すると、ModBの構造が元の細胞内側に開いた構造に戻り、タングステンが細胞内に取り込まれる。 また、各ModCサブユニットのC末端付近(図4の底付近)には、フック状の構造がある。 この構造は、ModCサブユニットをお互い組み合わせ、物質輸送サイクル中この2つのサブユニットが離れないようにしている。
ModAは細胞内に運び入れる物質(タングステン)を捕捉し、輸送体の外側に提示する。 ModAにタングステンが配位すると、ModBとの接触面に構造変化が起こり、 それがModBにゲートを開くような構造変化を起こさせるのではないかと考えられている。 図5に示している、ModAが1つ、ModB(TMD)が2つ、ModC(NBD)が2つ、合計5つのサブユニットが1つの単位となって働くが、このPDBエントリーで報告されているのは、この単位が2つ、ModAが向き合う形で連なった構造である。
タンパク質構造データバンク(PDB)参考文献原論文
その他
著者: 工藤 高裕 |