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PDB:2IAE

タンパク質名

タンパク質脱リン酸化酵素2A(ヘテロ三量体ホロ酵素)

生物種

ヒト

生物学的役割

タンパク質のリン酸化、脱リン酸化反応は細胞を制御するための基本的な機構である。タンパク質脱リン酸化酵素2A(PP2A)はセリン(Ser)/スレオニン(Thr)残基側鎖のリン酸基を加水分解する働きを持ち、細胞周期の調節や、細胞のシグナル伝達に関わっている。PP2Aはヘテロ三量体のホロ酵素であり、A(足場)サブユニット、C(触媒)サブユニットの二量体から構成されるコア酵素へB(調節)サブユニットが結合してできている。調節Bサブユニットは現在までに18種類発見されており、それらのアミノ酸配列類似性によりB(PR55)、B’(B56) 、B’’(PR72)の3つのファミリーに分類されている。触媒Cサブユニットは触媒部位を持っており、この領域は他のタンパク質脱リン酸化酵素(PP1、PP2B、PP4、PP6など)でも配列がほぼ一致している。PP2Aの機能異常は、癌腫瘍やアルツハイマー病と因果関係がある。 しかし、PP2Aの三量体形成機構や基質結合の調節機構は良く分かっていない。 今回解かれたPP2Aホロ酵素の結晶構造は、これらの機構を理解する上でとても重要である。

立体構造の特徴

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今回得られたPP2Aホロ酵素(ヒト)の結晶構造は、A、B56、CサブユニットとPP2A阻害剤の複合体である。(Fig.1参照)。Aサブユニットは15個のHEATリピートから構成されており、馬の蹄のような形をとっている。各HEATリピートは、二本の逆平行αヘリックスと、それらを連結する中間ループによって構成されている。(Fig.2参照)。単量体の状態でのAサブユニットは釣り針のような形をとっていたが、三量体の状態ではさらに内側へ丸まったC字型に変化している。 BサブユニットもHEATリピート状の構造を8個含んでいる。一方、Cサブユニットはコンパクトな楕円形構造をとっており、2つのMn2+イオンを含んでいる。 各サブユニット間の結合面の詳細を下に述べる。

(Fig.1) PP2A ヘテロ三量体ホロ酵素 (Fig.2) HEAT リピート

(A-C 結合面)
Aサブユニットの5つのHEATリピート(A11-A15)が Cサブユニットと広範囲で相互作用しており、ACコア酵素の安定化に寄与している。一連の相互作用を組んでいる残基の中でも、AサブユニットのK416、R418、V533は重要だと考えられる。実際、これらの残基で変異が生じ、A-C結合が分裂したPP2Aが癌患者の組織で発見されている。(Fig.3 参照)。

pp2a3 Aサブユニット(青)の5つのHEATリピート(A11-A15)が
Cサブユニット(ピンク)と相互作用している。
図中で黄色く示した残基の持つ相互作用が、
AサブユニットとCサブユニットの結合において
大事だと考えられている。
(Fig.3) A-C 結合面

(A-B 結合面)
AサブユニットとBサブユニットは直接には安定した結合を組むことはできない。しかし、メチル化されたCサブユニットのC末端がA-B結合領域に入っており、二つのサブニユットの結合を補強している。(Fig.4 参照)。

pp2a4 CサブユニットのC末端(ピンク)が、Cサブユニット(青)と
Bサブユニット(緑)の結合を仲介している。
(Fig.4) A-B 結合面

(B-C 結合面)
基質結合部位はBサブユニットとCサブユニットの結合領域の近くに存在している。異なる種類のBサブユニットがCサブユニットに結合することにより、基質結合部位の周辺は多少変化するはずである。つまり、Bサブユニットは基質結合や基質選択において、重要な役割を担っている。(Fig.5 参照)。

pp2a5 PP2A阻害剤(紫)は、Bサブユニット(緑)とCサブユニット(ピンク)の
結合領域付近に結合している。
(Fig.5) B-C 結合面

以上の知見から、PP2Aは以下に述べるような機構で三量体を形成し、基質を結合させていると考えることができる。まず、CサブユニットのC末端はメチル化されることにより、Aサブユニットの高い負のチャージを持つ表面領域へ結合することが可能になる。これによりBサブユニットのACコア酵素への結合が促進される(*)。そして、BサブユニットがACコア酵素へ結合することにより、基質結合部位は構造変化し、基質を受容できるようになる。(Fig.6 参照)。

pp2a6
(Fig.6)三量体形成と基質結合の模式図

(*) Xu らの行った実験によると、PP2A(ヒト)のCサブユニットのC末端を除去しても、やはり三量体が形成された(PDB:2NYM)。Xu らは、CサブユニットのC末端は三量体形成にとって必須ではないと主張している。

タンパク質構造データバンク(PDB)

参考文献

原論文

  • Cho, U.S. Xu, W.; "Crystal structure of a protein phosphatase 2A heterotrimeric holoenzyme."; Nature; (2007) 445:53-57 PubMed:17086192.

その他

  • PDB:2NYM PP2A (C末端除去された触媒サブユニットを持つ)

著者: 伊東 純一


English version:PDB:2IAE