| More ... | PDB:2GY7タンパク質名Tie2受容体細胞外ドメイン/Ang2 複合体 生物種ヒト 生物学的役割血管は脈管形成、血管新生とよばれる二つのプロセスにより構築される。最初のプロセスである脈管形成は、血管の内皮細胞に壁細胞が裏打ちすることにより、血管が安定化される過程である。しかし、局所的に酸素が不足している部分が生じると、壁細胞がはがれて、血管は枝分かれして酸素が不足している箇所へ伸びていく。このプロセスが血管新生である。血管新生によって栄養や酸素が行き届くようになると、壁細胞が再び内皮細胞に集積し、新生血管は安定化される。壁細胞の結合と解離には、内皮細胞に存在するTie2受容体チロシンキナーゼが関係している。正常酸素状態では、壁細胞から分泌されるAng1(アンジオポイエチン1、血管新生促進因子)がTie2に結合する。すると、Tie2は活性化され、壁細胞を内皮細胞に結合させる。反対に、低酸素状態では内皮細胞からAng1のアンタゴニスト(結合阻害剤)であるAng2(アンジオポイエチン2)が分泌され、それがTie2に結合するとTie2は不活性状態となり、壁細胞と内皮細胞は解離する。つまり、Tie2は二つのプロセスを切り替えるスイッチのような役割を担っている。ところが、Ang2が絶えず分泌され続けると、Tie2の活性がいつまでも抑制され、壁細胞のない安定化されていない新血管が形成されつづけ、これが腫瘍の原因となると考えられている。可溶性のTie2の細胞外ドメインを生体内へ投与したところ、血管の伸長や腫瘍の成長が抑制されたという報告がある。Tie2は腫瘍除去剤として期待できるかもしれない。 立体構造の特徴
Tie2はRTKsスーパーファミリーに属する膜貫通タンパク質である(Fig.1 参照)。このタンパク質の細胞外ドメインは、三つのIg(免疫グロブリン)ドメインと、三つのEGF(上皮細胞増殖因子)ドメインと、一つのFNIII(フィブロネクチン タイプIII)ドメインから構成されている。Tie2のリガンドであるAng2は、スーパークラスタリング領域(多量体形成において重要)が存在するN端と、それに続くcoiled-coilモチーフ、そして、フィブリノーゲン状領域が存在するC端で構成されている。今回得られた構造は、Tie2の受容体領域(23-445)と、Ang2のC端領域(280-495)の複合体である(Fig. 2 参照)。Tie2受容体領域では、3つのIgと3つのEGFが小さく折りたたまれ、全体として矢頭のような構造をとっている。リガンドであるAng2は矢頭(Ig2ドメイン)の先端に結合する。この構造は計14本のジスルフィド結合により安定化されている。(3つのEGFに4本づつ、Ig1とIg3に1本づつ)。3つのIgドメインはいずれもIクラスに分類されているが、各構造は微妙に異なっている(*1)。Tie2受容体とAng2は、結合する前と結合した後ではほとんど構造に変化がないことが特徴である。各構造の最も顕著な変化を挙げるならば、Tie2の方は、Ig2のC'ストランドがAng2の方向へ向かって1.0-2.6Å移動している(Fig.3 参照)。これは、C’ストランドのHis163がAng2の表面のループとファンデルワールス結合を組むことを可能にしている。Ang2の方は、Ser480がTie2のIg2の水酸基と水素結合を組むためにわずかに移動している。 (*1) 免疫グロブリンはその構造の特徴により、V、C1、C2、I の4つのクラスに分類されている。
タンパク質構造データバンク(PDB)参考文献原論文
その他
著者: 伊東 純一 |