| More ... | PDB:2G54タンパク質名インスリン分解酵素とインスリンB鎖の複合体 生物種ヒト 生物学的役割インスリン分解酵素(Insulin-degrading enzyme, IDE)は、Zn2+メタロプロテアーゼの一種で、インスリンとアミロイドβの分解除去を行う。また、アミリンやグルカゴンの分解にも関与しており、IDEは高い親和性を持ちつつも、多種多様な基質を分解することができる稀な酵素である。 インスリンはグルコース代謝の調節に重要であり、インスリン作用の不足が血糖値の上昇、果ては糖尿病を招く。アミロイドβに関しては、その脳内蓄積がアルツハイマー病の原因だと推測されている。 IDEはそれらの調節に重要な役割を果たし、IDEの機能喪失型変異は、グルコース不耐とアミロイドβの脳への蓄積を引き起こす。逆に、IDE活性の増強は、脳内のアミロイドβの量を減少させる。よって、血糖値上昇やアミロイドβの脳内蓄積という病状に対し、IDEに着目した治療方法の確立が期待される。 立体構造の特徴
Zn2+と結合し、インスリンB鎖と複合体を形成している変異インスリン分解酵素(IDE-E111Q)が分解能2.25Åで解かれた。IDEは4つのドメインから成り、ドメイン1、2がN末側(IDE-N)、ドメイン3、4はC末側にある(IDE-C)。また各ドメインは構造的相同性がある。今回解かれた構造は閉構造であり、インスリンB鎖をIDE内部の三角柱形の空洞に捕獲している。 IDEの触媒部位はZn2+と共にドメイン1にあり、そこに基質の切断部分が近づく。基質であるインスリンB鎖は通常単独で存在するときとは異なり構造変化を起こし、N末領域と切断部位がβストランドになっている。それらの領域でIDEと接触し、IDEのβストランドと共にβシートを形成している。また今回の結晶構造では残りの領域は構造が乱れている (disordered) (図1)。 基質ペプチドの選択的捕獲の要因となっているのが、上記の接触部位での適合性に加えて、C末側の電荷分布と基質の大きさである。IDE-Cが形成する空洞表面は正に帯電している為、その付近に来る基質のC末が正の電荷を持つことは好ましくない。また、IDE内に入り込む為、基質の大きさはある程度制限される。インスリンB鎖はそれらの条件に当てはまる基質である。加えて、アミロイドβ、アミリン、グルカゴンも適切な基質であり、IDEとの複合体結晶構造が解かれている (PDBjMine:2G47, PDBjMine:2G48, PDBjMine:2G49)。それら基質の構造は単独で存在するときと異なり、インスリンB鎖と同様に全てβストランドの形でIDEと接触している。 IDEの開閉制御に関しては、アロステリックな調節機構であると考えられているが、詳細はまだ不明である。
(図1) インスリンB鎖の立体構造変化 タンパク質構造データバンク(PDB)参考文献原論文
その他
著者: 藤田直也 |