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PDB:1GC1

タンパク質名

エンベロープタンパク質gp120

生物種

エイズウイルス1型(Human Immunodeficiency Virus type 1)

生物学的役割

インフルエンザウイルスのようなウイルスの蔓延は昔からあった。スペイン風邪として知られる1918年のインフルエンザ大流行では2500万人の死者が出たといわれる。ヒト免疫不全ウイルス(HIV)は1981年に初めてアメリカで同定された非常に新しいウイルスである。現在ではHIVはアフリカで発生したものと広く信じられている。その起源は近縁のサル免疫不全ウイルス(SIV)が種を超えてヒトに感染しHIVに進化したものかもしれない。HIVはインフルエンザのようなウイルスよりは感染力が低いが、大きな健康問題となっている。HIVはそれ自体では害をおよぼさない。むしろHIVは免疫系を弱めるため、その名前がつけられた。免疫系は感染に対して体が持つ主要な防御機構であり、免疫系が弱められると普段では無害なものの感染を受けやすくなる。そのような状況は後天性免疫不全症候群またはAIDSと呼ばれる。HIV陽性の人がAIDSを発症すると些細な感染が元でも、それに対して体が防御できないので死に至ることがある。他のウイルスと同様HIVはそれだけでは増殖することが出来ない。HIVはマトリックスと呼ばれる球状の殻をもち、その内側にはHIVの遺伝情報を含むウイルスRNAとその入れ物であるキャプシドがある。HIVはいわゆるレトロウイルスであり、このことは遺伝情報がDNAでなくRNAに含まれていることを意味する。HIVに感染した宿主細胞の中でRNAがDNAに逆転写され、そのDNAがウイルスを作るのに用いられる。明らかにHIVは宿主細胞に入り込まなければならず、そのために宿主細胞に付着するのを助ける表面蛋白質を持っている。それらの蛋白質はマトリックスをとりかこむ脂質の膜に埋め込まれている。それらは脂質膜中に存在する主幹蛋白質gp41と、gp41に付加されて宿主細胞の細胞表面受容体に結合する糖蛋白質gp120からなる。HIVが付着するのは免疫系のヘルパーT細胞である。ヘルパーT細胞はその表面にCD4と呼ばれる蛋白質を持ち、HIVがT細胞に入る前にまずgp120がCD4に結合する。

立体構造の特徴

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ここに示す構造はただのgp120ではなく、3個の蛋白質の複合体であり、一つがgp120、もう一つがCD4であり、CD4はKwongとHendricksonによってすでに構造決定されているものである。三つ目はHIVに感染した人の血液から単離されたモノクローナル抗体である。Peter Kwongがgp120の良い結晶を作るには数年の努力を要した。現在のところHIVの治療用に開発された薬はHIVの宿主細胞内での増殖機構を標的としており、それらはウイルスの逆転写酵素やプロテアーゼに対するものである。gp120がCD4に結合する方法を研究することで、gp120がCD4と結合するのを防ぐ分子を見つけることが期待される。そうすれば、HIVはもはや宿主細胞の中に入ることが出来ない。HIVは増殖するのに宿主細胞を必要とするので、これが広がることを防ぐことができるようになるだろう。

タンパク質構造データバンク(PDB)

参考文献

原論文

  • Kwong, P.D. Wyatt, R. Robinson, J. Sweet, R.W. Sodroski, J. Hendrickson, W.A.; "Structure of an HIV gp120 envelope glycoprotein in complex with the CD4 receptor and a neutralizing human antibody."; Nature; (1998) 393:648-659 PubMed:9641677.

その他

著者:Arno Paehler 訳者:小川 輝


English version:PDB:1GC1