| More ... | PDB:2IUUタンパク質名FtsK(C端)の六量体 生物種Pseudomonas aeruginosa (緑膿菌) 生物学的役割大腸菌の環状DNAはoriCと呼ばれる領域から複製が始まる(Fig.1)。複製フォークは両方向へ進行し、oriCの正反対のter領域でTus タンパク質(PDB:1ECR)により複製が停止する。複製を終えたdsDNAの二量体はdifと呼ばれる領域で組み換え反応がおき、2つの単量体(2本のdsDNA)に解離する。dif配列を認識し、組み換えを行う酵素はXerCとXerDの複合体である。さらに、XerCDはFtsKと呼ばれる酵素の助けを借りて二量体を解離させることが知られている。FtsKは大腸菌などの、多くの真正細菌に見られる膜結合型DNA転位酵素の一種である。DNA転位酵素とは、アデノシン三リン酸(ATP)依存的な分子モーターであり、染色体分割やDNA組換え、DNA搬出などのプロセスの際にDNAを急速に移動させる酵素である。代表的なものにT7gp4、DnaB、SV40(PDB:1SVM)、SpoIIIEなどがある。FtsKの構造は3つの領域から構成されている。Nドメインは細胞分裂の際に、細胞膜の陥入する位置の細胞膜に局在する。その後に続く、リンカー領域は菌種によって長さも構造も著しく変わる。そして、CドメインはDNAを6.7kbp/s以上の速度で娘細胞の方へと転位する。それと同時に自らはdif領域に向かって進み、XerCDを活性化させることにより、dsDNAを解離する働きを持つ。また、FtsKは六量体のリングを形成することにより機能を発揮するが知られている。各サブユニットの中央にチャンネルが形成されており、dsDNAはここを通過する。
ステップA: 環状DNAの複製はoriCから開始し、2つの複製フォークは正反対にあるterに向かって両方向に進んでいく。 (*) Fig.1ではFtsKは二分子のみ示されているが、実際は細胞膜が陥入する位置にたくさん存在すると考えられている。 立体構造の特徴
今回示す構造は、緑膿菌由来FtsKのCドメインの単量体(Fig.2)と、六量体(Fig4、Fig5)である。Cドメインはさらにα、β、γの3つのサブドメインに分けられている。αドメインはFtsK固有の構造であるのに対して、βドメインは多くの多量体ATPaseが共通して持つRecA状の構造をとっている。αドメインとβドメインの役割は、ATPを分解することによりDNAを移動させることである。一方、γドメインはXerCDの活性化に関わっている(γドメインはグリシンに富む構造であるため、今回はその構造を決定できなかった)。FtsKの単量体はそれぞれ同じ方向を向いて環状に並び、中央に右巻きのチャンネルを持つ六量体リングを形成していた。この六量体リングはdsDNAの存在下でのみ形成され、dsDNAがない状態では、ATPやイオンの存在に関わらず、単量体になる。チャンネルの内径はおよそ30Åであり、ssDNA(一本鎖DNA)に作用する他の六量体リング形成タンパク質(T7、TrwBなど)の内径よりもかなり大きくなっている。これは、βクランプ(PDB:3BEP)やPCNAタンパク質(PDB:1SXJ)と同様、サイズが大きいdsDNA(一本鎖DNA)が通過できるようにするためである。Gattiらは今回得られた構造を元に、DNAを転位するInchworm モデル(シャクトリ虫モデル)を提案した (Fig.3)。まず、DNAはチャンネルのβ側から侵入し、6つのサブユニットのいずれかのαドメインと結合する。同じサブユニットのβドメインがATPを分解することにより、構造変化が起き、αドメインはβドメインと反対の方向へ約5.5Å移動すると同時にDNAを引っ張る。これにより、DNAは最低でも1.6塩基対(bp)分移動したことになる。次に、この反動によりDNAは同じサブユニットのβドメインと結合し、αドメインと解離する。そして、次のサブユニットのαドメインと結合する。6つのサブユニットが、1回ずつこのステップを行うことにより、DNAは推定上9.6bp(1.6×6)以上動くことになる。この数値はdsDNAのらせん1回転分(10.5bp)にほぼ一致する。一方、DNAと相互作用している領域は、各サブユニットのα(300-302、380-384)、β(606-610、633-640、655-673)の5つのループと考えられているが、詳細はまだ分かっていない。
タンパク質構造データバンク(PDB)参考文献原論文
その他
著者: 伊東 純一 |