| More ... | かたちとはたらき:蛋白質の立体構造蛋白質のかたちとはたらき - 中村春木(大阪大学 蛋白質研究所)
プラスチックなどに使われている合成高分子は 蛋白質と同じように鎖状の分子ですが、 溶液中では糸まりのようにその鎖がからみあっているか、 伸びていて、分子毎に別々の立体構造をとるのが一般的です。 ところが、蛋白質は、生理的な環境下において、 アミノ酸配列に応じて決まった立体構造をとるのです(図1)。
それぞれの蛋白質の立体構造は、 結晶化したもののX線回折像や 水溶液の核磁気共鳴(NMR)スペクトルによって、 およそ1Å(1億分の1cm)の分解能で構造決定され、 構成する各原子の相対的位置まで調べられています。 世界中で決定されたこれら蛋白質の立体構造は、 蛋白質立体構造データ(Protein Data Bank;PDB)に整理されて蓄積され、 現在では4万件以上のデータが登録され、公開されています。 このデータベースへは、大阪大学蛋白質研究所の日本蛋白質構造データバンク PDBj にインターネットを通してアクセスができます。 図2には、いろいろな蛋白質の「かたち」を示します。
全てのアミノ酸で共通している骨格部分(主鎖と呼びます)の構造に注目してみると、 部分的によく似ている規則性のある構造が頻繁に見い出されます。 らせん状の規則構造はα−ヘリックス(らせん)、 シート状の規則構造はβ−シートと呼ばれ、 それらを総称して二次構造と言います。 これは、1次元情報であるアミノ酸配列が一次構造、 3次元立体構造が三次構造と呼ばれているのに対し、 その中間の階層に位置するものとして理解すれば分かりやすいと思います。 図2のように、たくさんの複雑な立体構造が蓄積してくると、 その整理・分類は、コンピュータの利用が不可欠となってきます。 特に、蛋白質立体構造の構造型 (内部の二次構造の配置のしかたを意味し、 最近ではフォールドという言葉で呼ばれます) は整理されて、 SCOP、 CATH、 DALI/FSSP、 Entrez/VAST 等、 インターネット上にいわば図鑑として公開されています。 このような、蛋白質のフォールドは約1000 種ほどであり、 多めに見積もっても8000 種には至らないと言われています。 これらの立体構造を眺めてすぐ気付くのは、 内部までよく詰まった構造であり、 その表面には、図1に示したアミノ酸のうち、 それぞれを特徴づける側鎖部分が、溶媒である水と親しみやすい (親水性と呼ぶ)ものが多く分布しています。 特に、正あるいは負の電荷を側鎖に持つアミノ酸の分子表面での分布は この蛋白質が働く際に他の分子を正しく認識する機能に深く関っています。 一方、球状蛋白質の内部では、 ほとんど、側鎖が油の性質(疎水性と呼ぶ)をもつアミノ酸で充填されています(図3)。 この状況は、洗剤分子が、 内側に疎水性部分を向け外側に親水性部分を向けて水溶液中で集合し、 ミセルと呼ばれる分子集合体を形成するのとも類似しています。
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